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生理会議♯1 「なんで今、生理の話がオープンになっているの?」歴史社会学者の田中ひかる先生と一緒に考えてみました!

2020年、私たち女子部JAPAN(・v・)では、みんなで生理について考える会議、その名も「生理会議」をはじめました。記念すべき第1回目は、昨年『生理用品の社会史』を出版した、歴史社会学者の田中ひかる先生を招いて開催。生理にまつわる歴史や興味深いエピソードをはじめ、大きなテーマで生理について伺いました。

また、最近、メディアでも「生理」という言葉が飛び交い、漫画や映画が注目されるなど、生理がオープンになってきている一方で、なんとなくモヤモヤしている私たちの気持ちについてもセキララに語り合いました。およそ2時間の会議を経て、見えてきたものとは?

(テキスト:女子部JAPAN(・v・) たけだ)

生理をもっとオープンに! 2019年、生理ブームがやってきた!?

 

こばなみ:女子部JAPANでは、これまでも生理にまつわるコンテンツをつくってきました。たしか2017年からかな。

 

 

ともい:「すっぴん調査」という意識調査をするイベントを定期的に行っていたんですが、「生理で失敗したこと 」を聞いたら、すごく盛り上がったんです。

 

 

こばなみ:それで、婦人科の先生に「生理を早く終わらせる方法があるのか」と取材に行ったり、「すっぴん調査」でも他の生理のネタ を聞いたり。

 

 

田中先生:生理の正しい情報を発信するのって、すごく意義がありますね。生理を整理する……というか(笑)。先日、読者の年齢層が高いメディアの取材を受けたら、予想以上に反響が大きかったんです。アンネナプキンの経験談を書いて郵送してくれた方もいて「今聞いておかないと聞けなくなる貴重な話だ!」と思いました。というのも、生理についての記録って、あんまり残っていないんですよね。

 

 

たけだ:2019年は、生理をオープンに話そうという時代の流れを感じましたが、なにかきっかけはあったのでしょうか?

 

 

田中先生:マンガの「生理ちゃん 」のヒットと、デザイナーで起業家でもあるハヤカワ五味さんが、「illuminate」という生理用品のセレクトショップを起ち上げたりしたのが大きかったかな。

あとは、世界的にもフェムテック(女性の健康を応援するテクノロジーやビジネス)の市場が広がっていたり、生理まわりの環境格差をなくしていこうという生理の平等化の流れがあったり。これからもどんどん広がっていくと思います。

 

こばなみ:オープンになるのはいいことだけど、“何のために”っていうのがもっと分かりやすく出てくるといいなと思う

 

 

田中先生:生理がオープンになってきて、少しずつ男性も関心を持ってきていますよね。でも、オープンにしなくてもいいこともありますなんで話さないといけないかってことを考えることが大事ですね。

 

紀元前から続く、生理と人類の複雑な関係とは?

 

たけだ:そもそも田中先生は、なんで生理のことを調べはじめたんですか?

 

 

田中先生:20代の終わり頃「生理用のナプキンって便利だけど、誰がつくったんだろう」って思ったのがきっかけ。調べたら日本人の主婦だったので、意外でした。

その後、大学院に社会人入学して女性史の勉強をするなかで、生理に関する興味深い史料をたくさん見つけました。1960年代のナプキンの登場が、女性の未来を変えたと知ったときは感動しました。これまでの女性の歴史を振り返っても、一番のターニングポイントかもしれない

 

おぜき:ナプキンのおかげで、外で働けるようになったんですね。

 

 

田中先生:実は「生理休暇」が労働基準法において定められたのは、終戦2年目の1947年のことです。まだナプキンはないし、ナプキン以前に生理用品として使われていた脱脂綿も手に入らない。生理痛に効く鎮痛薬も手に入りづらく、会社にも駅にも、女性用トイレがないような時代でした。

 

hicary:そうなると、外を出歩くのも男性が中心なのかな?

 

 

田中先生:そう。女性は基本的に、家のなかにいるものとされていました。女性たちが人知れずいろんなことを諦めていた時代が続いていたんですよね。生理についても語れない時代が続いていましたが、ようやく、語りやすい空気になってきたということかな。

 

 

いとい:生理について、みんなで話せるようになってきた、と。

 

 

田中先生:たとえば、男性は、生理の基本的なことを知らなかったりしますよね。それゆえに、生理で休むとなまけていると思われたり、災害時の避難所で生理用品がスムーズに配布されなかったりといった問題が出てくる。生理の基本については、性別にかかわらず、みんなに知っておいてほしいですよね。

 

 

ともい:以前、日本カルミックというサニタリーボックスなどを開発している会社に取材に行ったとき、営業先の男性が生理について知らない方が多くて、理解してもらうのに苦労しているという話を聞きました。

 

 

田中先生:どんな初経教育を受けたかにもよりますね。最近は、男女が一緒に学ぶことがいいとされていますが、私は当事者である女子の気持ちが一番大事だと思うので、もし女子が恥ずかしいなら別々に学んでもいいと思うんです。からかう男子もいるじゃないですか。

 

 

アリ:家庭でのあり方にもよるのかな? 家族が男性ばかりだったり、お母さんが徹底的に隠していたら、知る機会がないのかも。

 

 

こばなみ:うちは母親が強くてけっこうオープンだったから、弟は「女とはこういうものだ」って分かっていたと思う(笑)。

 

 

田中先生:実は、明治時代くらいまで、「女性は生理があるから論理的な考え方ができない」って学校でも教えられていました。人の命や政治は任せられないから、医者や政治家には向いてないって。今も「女は生理があるから感情的だ」なんて言う人もいますが。

 

 

たけだ:えっ、そういう考え方がずっと? 

 

昔あった「生理休暇」をなくしたのは、女性!?

 

田中先生:女性ホルモンの変化によって、女性には1ヵ月周期のリズムがあるとよく言いますよね。でも、それを強調し過ぎると、女性を差別する考えにつながることもあります

 

hicary:なるほど。PMS(月経前症候群)で不安定になると言われるからかな。

 

 

こばなみ:根が深い!

 

 

田中先生:いまだに「生理のときは、犯罪を犯しやすい」と言われていたり

 

 

アリ:偏見ですよね!?

 

 

田中先生:偏見です。まれに生理前にものすごく精神状態が悪くなるという人がいますが、それはPMSではなく、PMDD(月経前不快気分障害)という概念で考えるべき。精神科で治療法が確立されつつあります。

 

 

こばなみ:ぜんぶ「生理のせい」にすると、分かりやすいから…… ⁉︎

 

 

 

田中先生:戦前は、犯罪を犯すと取調べのときに必ず生理中だったかどうかが問われ、生理中だった場合、無罪になることも珍しくありませんでした。受刑者への調査でわかったことですが、生理を利用していた女性もいました。

 

 

たけだ:えっ!? はじめて聞きました!! そんなに不安定なのかな……女性って。

 

 

田中先生:生理は長い間「穢れ(けがれ)」とされ、女性同士でもあまり話題にしてこなかった。だから、男性も想像するしかない。間違ったことを誰も訂正しない。

 

 

いとい:逆に、男性から「気づかないふり、知らないふりをすることが、礼儀や優しさだと思っていた」という意見を聞いたことがあります。生理がオープンになっているこの機会に正しい情報が広がるといいですよね。

 

 

田中先生:戦後「生理休暇」が労働基準法に規定されたとお話ししましたが、1985年の男女雇用機会均等法ができたタイミングで、「生理休暇」という用語はなくなったんです。生理用品や鎮痛薬の進化、女性用トイレの整備などにより、生理休暇を取得しない女性が増え、制度が形骸化したこともありますが、生理休暇が女性の社会進出の足枷になるという考え方もありました。

 

 

アリ:女性自身が「生理休暇」をなくしたんですね

 

 

田中先生:職場によっては女性が全員、毎月一律4日休んだりしていました。生理による不調がなくてもです。閉経しても退職まで休暇を取り続けていた女性もいました。

 

 

たけだ:個人差があるから、ひとつのルールでくくるのは難しいのかな。

 

 

田中先生:生理にともなう不調は個人差が大きいですからね。「生理休暇」ということではなく、具合が悪いときにみんなが休みやすい社会になればいいと思います。もちろん女性に限らず 

 

一方で、生理をオープンにしたくない気持ちも……

 

おぜき:そもそも「生理休暇」という名前だと、「わたし、生理です」って言っているようなもんですもんね。

 

 

hicary:「お腹が痛いから」とか症状で言えばいいんだと思う。

 

 

こばなみ:そう!「生理」って名前を出してもいいじゃんっていう思いと、言うのがイヤだっていう気持ちがあるんですよね。

 

 

たけだ:私も「生理をオープンに」っていうのは頭で理解しているけど、隠したい気持ちもあって。なんで自分がそう思うかわからないんです。

 

 

田中先生::それはね、結局、下(しも)の話だからですよ。つまり、排泄大、小と同じ。経血は排泄物です。実際に使用済みナプキンは汚いわけで。

 

 

こばなみ:私は、大や小の話は男友達ともできる(笑)。でも、生理のことは、ちょっと話せないんですよ。

 

 

田中先生::もちろん、羞恥心には個人差があります。「生理」や「性」をオープンに語ろうというのは悪いことではないけれど、単なる露悪ととらえたときに、反動があると思うんです。私はそれが心配。

 

 

こばなみ:生理用品を買ったとき、中が見えない紙袋に入れてほしいかどうかの議論もありましたよね

 

 

田中先生::SNSを中心に「♯NoBagForMe 」が話題になりましたね。生理用品の袋が必要か不要かのアンケートで、「不要」という意見の方が多かったのは意外でした。

 

 

おぜき:私は、逆に「なんで隠さなきゃいけないの?」って思う。

 

 

ともい:私も、コンビニでバイトしていたときに、あれは不要だと思っていた。

 

 

こばなみ:紙袋に入れてくれると「丁寧に扱われている」って気がする。私は入れてほしい派です。

 

 

あり:買い物の帰り道に、他人からの目も気になるから、見えないようにしてほしいかな。

 

 

田中先生::職場のトイレに、生理用ポーチを持っていくのが恥ずかしいという人もいますね。

 

 

いとい:ポーチに見えない“ハンカチ風デザインのナプキンポーチ”を見たとき、すごく日本っぽいなって思いました。

 

 

 

田中先生:日本と欧米の違いは、タンポンの使用率。最近の20〜30代の人ってタンポンをあまり使わないそうですね。私たち世代は「生理だから、○○できない」って言いづらかったので、タンポンを使っていたと思う。今は、月経カップを使っている人もいるでしょうし、最近「月経ディスク」という新しい生理用品も出てきました。

photo by Enrique Balducci

↑2016年にアメリカで誕生した「月経ディスク」

 

いとい:私の友だちは「結婚するまでタンポンは使っちゃダメ」と聞いて、使わなかったらしいですよ。

 

 

田中先生::高校の水泳部にいたとき、タンポンを使わない主義の先輩が、大量出血しながら泳いでいました

 

一同:えーーーーーーーーーーーーーっ!?

 

 

田中先生::水圧で出血しないと言われていますが、量や動きにもよりますよね。

 

 

こばなみ:えっ、そういう観点で温泉にも入っている人もいるってこと?

 

 

田中先生::いると思います。そういったことも含めて、議論が深まるといいですね。

 

 

たけだ:そのために、生理をオープンにする目的や意味を、みんながちゃんと知っておくことが大事かなと思います。具体的にはどういうことなんでしょう。

 

生理をオープンにするのは、何のため?

 

田中先生::たとえば、職場で恥ずかしくて生理のことが言えなくて、無理している人をなくすため。学校で生理のことが言えなくて、プールも休めなくて無理をしている人をなくすため。避難場所でも生理用品をスムーズに配布するため。震災のときに1人に1つずつナプキンを配ったという話もありますが、基本的な知識があればそうはならないですよね

こういった、現実的な目的のために、みんなが生理のことを知っておいてほしいというのはあります。ただ、生理に対する考え方もいろいろですから、恥ずかしい、話したくないという気持ちも尊重する必要があります。

 

たけだ:すべてをオープンにしたいわけじゃない。

 

 

田中先生::生理痛や月経前症候群の有無や軽重には個人差があるということは、知っておいてほしい。男性だけでなく、女性も自分を基準に考えてしまいがちなので。

 

 

いとい:私は、自分の生理が人と比べて軽いんだと、実は最近知りました。

 

 

田中先生::そして、今は低用量ピルなどを使って、生理をコントロールすることができることも知っておいてほしいです。生理をなくしたければ、なくすことだってできる時代。もしかして、生理がなくなる未来がくるかもしれません。

 

 

こばなみ:なんだか、モヤモヤが晴れてきた!

 

 

田中先生::生理についての正しい知識を提供していくことは必要です。一方で、誰もが生理について語りたいと思っているわけではないので、その点も配慮していきたいですね

 

オープンな気持ちと、恥ずかしい気持ちは、どっちもあっていい!

生理をテーマに話題の枝葉がぐんぐんと伸びていって、田中先生の興味深い話に引きこまれていった2時間。生理の話題をオープンにしてみんなの理解を深めていく一方で、生理の話を恥ずかしいと思う人にも配慮する。その両方の視点をバランスよく持って、生理と付き合っていくことが大事だと気づきました。

そして、女性のあり方を買えた生理ナプキンのありがたさ……。恵まれている時代に感謝しつつ、今後も生理会議では、生理をいろんな角度から掘り下げていきます。お楽しみに!

 

歴史社会学者 田中ひかる先生

1970年、東京都生まれ。博士(学術)。著書に『月経と犯罪女性犯罪論の真偽を問う』(批評社)、『月経をアンネと呼んだ頃生理用ナプキンはこうして生まれた』(ユック舎)、『「オバサン」はなぜ嫌われるか』(集英社新書)、『「毒婦」和歌山カレー事件20年目の真実』(ビジネス社)、『生理用品の社会史』(角川ソフィア文庫)など。

 

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