【ライムスター宇多丸のお悩み相談室379】緊張と自信のなさから、ビジネス系セミナーで積極的に発言できない自分が嫌になっています……。
【今週のお悩み】
私は現在、ビジネス系のオンラインセミナーに通っているのですが、そこで積極的に発言できないことに悩んでいます。大勢の人がいると緊張してしまうのと、あまり自分の考えに自信もないため、気後れしてしまい、いつも発言しそびれてしまいます。
人の意見を聞いているばかりになってしまっている、学びに行ってるのに、積極的になれずもったいないという思いがあり、いつもセミナー後には激しく落ち込みます。何をビビっているんだ、なんて小さい人間なんだと、嫌になってきてしまいます。こんな思いを断ち切るため、発言するにはどうしたらいいでしょうか。勇気を出せる、なにかよい方法があれば、アドバイスいただけると助かります。
(スーパー・東京都・33歳)
宇多丸:僕はこういうビジネスセミナーとか、当然のごとくあまり明るくないんだけど、要は講義的なのがあったあとに、質問コーナーみたいなのがあるってこと?
こばなみ:私が行ったことあるのは、講義を進行しながら「これわかる人?」「はいはい!」って、挙手して自分の意見を言っていく、のような感じでした。講義が終わったあとに、手を挙げて質疑応答するものもありますよね。
宇多丸:そしてスーパーさんは、その局面に強い苦手意識を抱いている、と。
だったら単純にさ、もっと強制的になんらかの発表のターンがあるようなところに行く、というのはダメかな?
たしかに、フリーなクロストーク状態から頭ひとつ出るって、けっこうハードル高いことだと思うから。
僕だって、場所とかタイミングによっては、難しいなって思いますよ。
その前に、まず大前提として留意していただきたいのは、この前の会議の話にも通じるけど、そういうのは別に、いきなり「正解」っぽいことを言わなきゃいけない場でもなんでもないから、ということで。
むしろ、思いっきり恥かいたり間違えたりするためにこそあるものでしょ。
実際のビジネスでミスしたらいちいちおおごとだけど、そうならないよう事前にいろいろ身をもって学んでおきましょう、という話なわけで。
だから、ホントはあらゆる意味で尻込みすることなんかないんですよ、とは言っておきたい。お金払ってるんだし!
ただ、そこでこっちを気おくれさせないように授業のやり方なりなんなりを「設計」しておくというのは、セミナー側の仕事だろう、とも思いますからね。
その点、今スーパーさんが通っているところは、わりと大雑把というか、「みなさんご勝手に」スタイルみたいですもんね。その意味ではやっぱり、少なくともスーパーさんには向いてないのかもしれないですよ、そこは。
ということで、スーパーさんの場合は、もっと参加者全員に均等に発言や発表する機会がそもそもセッティングされてるようなところに行けばいいんじゃないか、と思うんですけど。
それも、わりときっちり事前に準備して順にプレゼンしてゆく、みたいな形式のやつ。
きっとあるよね? そういうところ。
とにかく、複数の人がはいはいはい!ってやってるなかで何か言うのって、発言のなかでもかなりハードル高いほうですよ。
スーパーさんが悪いんじゃないよ。
こばなみ:必要以上に落ち込むことないってことですよね?
宇多丸:まったくもって。
自信がないって、これから学ぶ段階なんだから、なくて当たり前だし。
そんなところで自信満々風にふるまってるやつのほうが、よっぽど問題だよ。
あと、これもそもそもの話だけど、先生の話を聞いて勉強になればそれでいい、というタイプの講座とかなら、別にそんな無理して発言することもないわけで。
だから、スーパーさんは積極性を持たなきゃ!と焦ってるけれども、なんのためにそれが必要なんだっけ?ということを、一度改めて考えてみてもいいかもしれませんよね。
こばなみ:目的しだいってことですかね。
宇多丸:きちんと個別指導に近いようなものを受けたいのであれば、今のところはちょっと放任すぎるから場所を変えたほうがいいのかもしれないし、単に講義を聞ければいいだけなら、そこまでがんばって発言なんかしなくてもいいじゃない、という考え方もできる。
いずれにしても、スーパーさんに合ったところを選べばいい、というだけのことですよ。
あなたお客さんなんだからもっとふんぞり返ってていいよ!(笑)
こばなみ:かなり落ち込んでる感じですけども、たしかに選ぶ権利はこちらにありますしね。
宇多丸:まぁ気持ちはわかりますよ。
まわりの人たちがガンガン的を射たっぽい発言してるなかで自分だけ何も思いつかない、みたいな状況になれば、それはやっぱりしょんぼりしちゃうよね。
でも、そいつらだって知らないことを知りに来てるのにかわりはないわけだし、別にこの段階で気の利いたこと言う合戦するためにお金払ってるわけじゃないんだからさ。
大事なのはそこから自分が何を持ち帰るか、だけなわけだし……それにその意味では、ただ人の意見を聞いて感心するというのも、立派にプラスのうちでしょ。
実際、「聞く」能力こそが、最も学びに直結するものだとも思いますし。スーパーさんが一番ちゃんと元とれてるのかもしれないよ?(笑)
なんにしてもやはり、何を勉強しに行ってるのかってことを、ご自分のなかでいったんちゃんと整理してみるといいかもしれないですね。
こばなみ:参加人数も関係するかもしれないですしね。
宇多丸:そうだよね。
スーパーさんには、マンツーマンに近い少人数制か、逆にもうめちゃくちゃ大勢が聴講だけするようなやつか、どっちかが向いてるのもしれないですよね。
それに、そういうところではいはいはいー!って躊躇なくやれちゃう人が、じゃあ実際そんなに中身があることを言ってるのかというと、そうとも限らないし。
むしろ、その場ですぐに返せる反応というのはつまり、その人の中に最初からあったものをそのまま出してるだけということだから、意外とそこまで発展的な内容にはなりようがなかったりするんですよ。
あと、実は先生が言ったことをちょっと違う表現、大きな声で繰り返してるだけ、とかね。
こばなみ:それ、会議とかでもありますよね。
宇多丸:そういう人がじゃあ人間として「大きい」のか、って話ですよ。
だいたい、人の中身に大きいも小さいもねぇよ、というのが僕の考えですけどね。
「大きく見せたい」人ならたくさんいるけどね!
なので、繰り返しになりますがスーパーさんに関しても、現時点でついオドオドしてしまうのは何もおかしなことじゃないし、もうちょっと積極的になりないならちゃんとそうさせてくれるようなところを選べばいいというだけなんだから、不毛な自己卑下はさっさとやめて、必要な学習を粛々と重ねてゆけばいい、ということに尽きるんじゃないですかね。
こばなみ:宇多丸さんが言ってくれたことで、本来の目的を見つめ直し、激しい落ち込みを断ち切れるといいですね。
にしても、学ぶ姿勢があるっていうのは素晴らしいなって、私は思います!
【今週のお絵かき】
画・宇多丸
ライムスター・宇多丸/日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(毎週金曜日21:00~21:55)、TBSラジオ・プレイステーション presents 「ライムスター宇多丸とマイゲーム・マイライフ」(毎週木曜21:00〜21:30)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。http://www.rhymester.jp/
※宇多丸・三沢和子編著『森田芳光全映画』が発売中!! 詳しくはこちら
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女子部JAPAN(・v・)・こばなみ/2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行。それを機に「iPhone女子部」を結成。現在は部活型コミュニティ&メディア「女子部JAPAN(・v・)」として、スマホに限らず、⼥子が知りたいけど難しくて挑戦できないコトやモノを、みんなで一緒に体感するイベントやコンテンツを企画・実施。最近はフェムテックなど、女性ならではのコンテンツの発信中。新入部員も募集中(年齢不問、部費無料、イベント案内などあり)。入部はこちら。