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【ライムスター宇多丸のお悩み相談室420】会社で採用目的にポッドキャスト番組を始めたのですが、いざ自分が話す立場になると、どうやっていいのかわかりません!

【今週のお悩み】

勤めている会社が、このご時世、採用目的になんとポッドキャスト番組を始めまして、テスト的に各回のゲストをお招きしてホスト役を務める役として白羽の矢が立ってしまい(!?)、第1回・2回分の放送内容を録ったところ、疲労困憊です……。ふだん、アトロクはじめラジオがすごく好きで馴染みがあるのに、いざ自分が話す立場になると、どうやっていいのかわかりません。

ちなみに、都内在住OLでして、会議やプレゼン等には百戦錬磨と自負しており、「まぁ会議と一緒でしょ」と自らを鼓舞して収録に臨んだのですが、音声番組をつくることの難しさというか、そもそも「私は、誰の立場で、どういう仮面を被ってしゃべればいいの!?」と、会社の名前を背負って会議等をするのとはまた一味違い……。未知体験として、どういうテンションで臨めばいいのか……。ふわふわ雑な質問で恐縮ですが、ライブ経験もラジオパーソナリティ経験も長い宇多丸さんに、一言アドバイスいただければ幸いです。

収録の環境としては、会社の会議室に、役員さんと私の2人きり(編集等々やってくださるスタッフさんは隣室やリモート参加)で、何となく決まっている台本を、パソコンのモニター越しに見ながら会話する(これは会話なのか??)。いざ「お願いします!」の号令をいただいて、宇多丸さんみたいに「ラジオ人格」になるには、どうしたらいいんでしょうか……?(本当に、宇多丸さんスタッフさん各者、曜日パートナーの熊崎さん宇垣さん日比さん宇内さんタカキ氏!と、改めて、頭があがりません) 年齢が近いこともあり、収録している最中に何となく宇内アナウンサーを思い出し、収録しながら徐々に、「宇内さんのしゃべりとかテンションをトレースしてみよう!」と自分自身に言い聞かせながら、落ち着かせた感じになりました。

以上、長々と失礼しましたが、「本番1分前、30秒前……」と刻まれる、かつ、割と自分にとって、やったことない、かつ、外からの期待もそこそこあるであろう……みたいな場面で、宇多丸さんは、何を思われますか。

(市ヶ谷 30代・東京都)

 

 

宇多丸:本来お堅い会社が採用目的でそういう自主発信を始めるって、いかにも年寄りくさい言い方ですが、時代だなぁって感じですよね。

 

 

 

こばなみ:ちなみに私、企業に向けて、社内報の代わりに社内ラジオ番組の提案をしたことがありますよ。

その企画は通らなかったのですが、実際にやっている会社もあるんですね。

ということで、宇多丸さん、これはどういうテンションで臨めばいいのでしょうか?

 

 

宇多丸:まず、一応プロの端くれから見ても、これはそりゃ難しいよ!みたいな話ではありますけどね。

市ヶ谷さん、「会議やプレゼン等には百戦錬磨」というのはつまり、自分の考えを自分なりのやり方で伝えるのは得意、ということなんだろうけど、ここではホストとして、それこそしゃべりが達者とも限らないお偉いさんを迎えて一定の話を引き出さなきゃならない、という、実はまったく違うハードルに挑まされているわけですからね。

社内の人にしても、何かのエキスパートとか、聞くべきことが明確なゲストならいいけど、単に役職上偉い人を座らせて会社のこと全般について聞いたって、そりゃどうしたってぼんやりした話にしかならないんじゃないの、という感じがしますけど。

 

 

こばなみ:一応でもこれ役員だから、経営のことは聞けるんだと思いますけど。

 

 

 

宇多丸:仮にそうだとしても、それはいま就職先を探してる人がもっとも知りたいような情報なのか、という問題があると思うな。

それに、どうせそんな踏み込んだことは言ってくれなさそうじゃない? そりゃ立場上、基本きれいごとしか言ってくれないでしょ、っていうか。

それでも年長者なりの話の面白さがある、とかならまだしもだけど、市ヶ谷さんの書き口からして、明らかにそうじゃないっぽいわけで。

なまじ台本もあるらしいから、さらに予定調和的な、誰得なところに落ち着いてしまいがち、というのもあるかもですね。

とにかく、第一に考えるべきは、なんのために、誰のためにこれをやっているのか、ということで。

この場合はもちろん、就職希望者を惹きつけ、あわよくばよさそうな会社だな、という印象を抱いてもらうことなわけですから。

その大目的のために、では何をすべきなのか?を考えていけば、とりあえずは間違いないはずですよね。

たとえば、しゃべり手としての立ち位置をどこに置くか?ということに関しては、「将来の後輩、同僚たちに向けて、現役の先輩が話しかける」というテイで行けば、まぁそうズレたことにはならないんじゃないか、とか。

そのうえで、単純にもっとクオリティを上げる、メジャー感を出すということなら、そういう音声コンテンツ制作のプロに頼むというのが、まずは当然、いちばんの近道ではありますが。

単にしゃべり手の力量だけじゃなくて、録音の状態、SEの入れ方やBGMの流し方、編集のテクニックなどによって、言うまでもなく聴こえ上の映え方というのは、大きく変わってきますから。

 

 

こばなみ:編集等やってくださるスタッフっていうのは一応いるっぽいですけどね。

 

 

宇多丸:じゃあ、内実はともあれ聴きヅラ上、一定のクオリティに持ってける体制はすでにあると仮定して……

ではやっぱり、問題はそのなかで何をやるのか、要は「企画をもっと練りましょう」ってことに尽きるんじゃないですかね。

おそらく現状は、すごいぼんやりした会社アピール、みたいな話しかできてないんじゃないかと思うんですよ。

役員と二人きりしかいなけりゃ、聞ける話にも限界があるし、具体性も欠いた内容になってしまうのもある意味当たり前で。

そうじゃなくて、たとえばだけど、社内のこの部署のこの件のプロフェッショナル、たとえば「営業トップの○○さんにその極意をうかがいます!」とか、誰になんの話を聞くのか、という焦点を絞った企画を入れてったほうが、より身のある話は出てきやすいし、就職しようとしてる人の参考にもなるんじゃないかな、と。

僕も「アトロク」スタッフにいつもしつこく言ってることですけど、どんな有益な情報でも、ちゃんと「切り口」を見つけてから提示しないと、焦点がぼやけて頭に入ってきづらくなってしまうものだから。

 

 

こばなみ:何か企画のフレームを1つ作っちゃってもいいかもですね。

でも市ヶ谷さん、企画の人ではないのか!?

 

 

宇多丸:いや、しゃべり手の立場から「こういうのだとやりやすいんですけど」みたいな案をどんどん出してくの、ぜんぜんありでしょと僕は思いますけどね。

あとは、視聴者の知りたいことにちゃんと応えるという意味で、質問コーナーとかやってもいいんじゃないですかね。

それこそ「お偉方に聞け!」みたいなタイトルでもつけて、役員たちがタジタジになるような、ちょっと攻めた話題も臆せず投げかけていったりすれば、役に立つうえに、普通に面白くなりそうじゃない?

 

 

こばなみ:なんかもう、番組プログラムができてきたじゃないですか!

 

 

 

宇多丸:こういうの考えるの、ホント楽しい……

いま話しててふと思ったけど、僕はたしかにしゃべり手としてプロ的な立場にいるように見えるかもしれませんが、仕事のほとんどは、なんのことを話すのかという中身込み、自分発案のもの含めた企画ありきで、そうじゃなく手ぶらで出演しているのは、レギュラーでは『バラいろダンディ』くらい(笑)なんですよね。

要は、自分がしゃべりたい話、しゃべれる話ができる場を、自らつくったり、選んだりしているだけ、というか。

なので、純粋なしゃべり手というよりは、企画者が演者も兼ねている、というほうが実態にも僕自身の自意識にも近い気がします。

市ヶ谷さんも、プレゼンするのは得意ということですから、そんな感じで自分がしゃべりやすい、人からも話を聞きやすい番組のかたちをまずは自分から積極的に構築してゆく、という考え方で行ったほうが、少なくともより楽しくやれるんじゃないですかね

で、企画をいいことに、役員に向かって「未来の新人たちのために、あえて聞きづらいことも聞きますよっ!」ってグイグイ詰め寄ったりしてさぁ……面白くなる余地、いくらでもある気がしてこない?

 

 

こばなみ:会社側からの一方的できれいごとばかりのプレゼンは、他の採用サイトでも同じ様なことを書いてたりするでしょうし。

 

 

宇多丸:しかもそれを、表面的にプロっぽくペラペラペラペラやられても、うさんくさいなぁってなるだけだよねぇ。

せっかくこっち発でつくってるコンテンツなんだから、自分たちなりに楽しんで、面白いと思ってやらないと、意味ないじゃん? 

就職希望者こそそういうところ、敏感に感じとると思うよ。

逆に、さっきの「お偉方に聞け!」みたいなことを何よりまずつくり手たち自身が楽しんでやっていることが伝われば、少なくとも「いい雰囲気の会社だな」ってことにはなるはずでしょ。

役員を一社員が公式にネタにしているのを見れば、それだけ風通しがいい社風なんだな、ってことになるわけだから。

だから、番組をしっかり面白いものにしてゆく意義というのは、やっぱりぜんぜんあるんだと思いますよ。

 

こばなみ:視聴者も増えれば、応募者も増えるでしょうし、目的は達成できますね。

 

 

宇多丸:何より、どうせやるなら楽しくやるほうがいいに決まってるじゃん!

だからとにかくまずは、企画からしっかり立てて。

最初はパクリでいいですよ。『プロフェッショナル 仕事の流儀』とかのパロディでもいいよ。

とにかくなんらかのフレームを設定するだけで、ホントにまったく違ってくると思いますから。

 

こばなみ:相談文の最後の方にある、本番前のマインド面はいかがですか?

 

 

 

宇多丸:「ラジオモード」に入るスイッチの話ですよね。

まず、本番直前、カウントダウンの手前か途中で、司会=座長として、「では、今日もよろしくお願いしますー!」とかなんとか、元気よく全体に呼びかけてみたりすると、ちょっと空気も締まったりするんじゃないですかね。

あと、手っ取り早いのはもちろん、何か決まり文句みたいのをつくる、ってことですよね。

「毎度おなじみ流浪の番組、タモリ倶楽部です」……そこまでテンションをいきなり上げたりしなくても、なんかしっかり「始まった」感じがやっぱりするじゃないですか。

最後も、淀川長治さんの「サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ」じゃないけど、なんか締めフレーズを考えて。

最初は多少の小っ恥ずかしさを感じるかもしれないけど、とにかくそうやって入口と出口の「型」をつくっておくことで、メリハリは絶対についてくるはずだから。

「来たれ! 未来の同僚~!」みたいなのでもいいし……ただ個人的には、ヌルッと始まってヌルッと終わる、とかもぜんぜん好きですけどね。

みんながみんなメディア慣れしたようなふるまいをするのって、ぶっちゃけつまんないことでもありますからね。

それよりやっぱ、中身を面白くしていくことを考えようよ!と思う。 

本気で聴いてほしいと思えるものになってくれば、自然と自信もついてくるよ。

たとえば途中のミニコーナーということで、会社の近所の美味しいお店レポート、とかもいいんじゃない?

そこの大将とかにもインタビューしてさ、「うちの社員たちどうですか?」「あ~、正直うるさいね~(笑)」みたいな、そういうのもちゃんと出せば、なんか信用できんなって感じするじゃない?

 

こばなみ:いいですね! そしてぶらり系の企画は多くの人が好きですしね。

 

 

宇多丸:「ぶっちゃけ一瞬サボるならここ! 社員が明かすマル秘スポット特集」とか(笑)。

そういう感じで、会社紹介というのをこっちもできるだけ面白がってゆく、というのが望ましいと僕は思います。

 

 

こばなみ:せっかくなら楽しんでやった方が、絶対いいものになるし、効果だって出ると思うし。

 

 

宇多丸:それさえできてれば、しゃべりの技術なんかは、心底どうでもいいことですよ。

たぶん市ヶ谷さんは、普通にしてればぜんぜん大丈夫なほうの人だろうと思うし。

 

こばなみ:なんか構成とか、一緒にやりたいですね~。

わたくし、母体はコンテンツ制作会社を運営しておりますので、ご入用であればなんなりと! 連絡ください~!!

 

宇多丸:あ、ここで僕が出した案も、ぜんぜん使っていいからね!(笑)

 

 

 

 

【今週のお絵かき】

画・宇多丸

 

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ライムスター・宇多丸/日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。http://www.rhymester.jp/

 

※SOIL&”PIMP”SESSIONSにRHYMESTERを添えて「初恋の悪魔 -Dance with The Devil-」(日テレ系ドラマ『初恋の悪魔』最終章テーマ曲)が発売中。詳しくはこちら

 

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女子部JAPAN(・v・)こばなみ/2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成、現在はコミュニティ&メディア「女子部JAPAN」と改名し、企画・運営に携わる。★最近、働く女性リーダーを応援する「F30プロジェクト」をはじめ、仕事上のコミュニケーションの課題解決やGとされていることも支援に取り組む企業を取材しています。よかったらチェックしてみてください。こちらどうぞ!

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