【ライムスター宇多丸のお悩み相談室165】外国人と結婚したいという理由で振られました。彼はそのために整形も! モヤモヤが消えません。
【今週のお悩み】
元彼に対するモヤモヤが消えません。結婚をなんとなく意識して付き合っていた彼氏から最近別れを告げられました。理由は日本人の女性と結婚するつもりがないというあまりに突飛な理由でした。さらに深く追求してみると、実は私と出会う前に整形をしていた事を告白されました。彼曰く、外国人と結婚したいと思った理由に自分の整形も関係してるとのことでした。美意識が異常に高い人は結婚相手にまでそういう人を求めてしまうんでしょうか? 彼からは、今後は良き友達付き合いをしたいと言われています。私も人として彼のことは好きなので、適度な距離を保ちつつ友人関係を築ければと思うのですが、整形→外国人と結婚という彼の思考がやはり理解できません。なにか良きアドバイスお願いいたします。
(なまず・33歳・神奈川県)
宇多丸:こ、これはぶっちゃけ……アドバイスどうこう以前に、この連載でもたま~に来る、「あまりにもどうかしすぎてて、もはや笑える領域にまで行っちゃってる男」、的なカテゴリーなんじゃないのかな~? 結婚まで考えていたという、なまずさんには悪いけど。
だって、その彼の言ってること、あらゆる意味でおかしすぎでしょ! そんな理屈、今まで聞いたことないよ!
「整形→外国人と結婚という彼の思考がやはり理解できません」って言うけど、我々だって理解できませんよ!
こばなみ:久々に来ましたね、クレイジーもの。
過去にも「夢の国でバイトしてると嘘をついていた彼。受け容れられない私は心が狭い?」や、「親友が変な男にハマってしまって、言動も性格も変に! 放っておくしかない?」での合法ハーブを常用してる一人称「オイラ」な中年ミュージシャン崩れとか、突飛なメンズが登場する相談がありましたが、今回もかなりすごい。
宇多丸:相当キてますよ……どこから突っ込んでいいかわからないくらい。
だいたい、「外国人」っていう括りが大雑把すぎるだろ! 日本人以外全部じゃねぇか!
ま、こういう雑なこと言い出すくらいだから、十中八九、ざっくりと「白人」ってイメージだったりするんでしょうけども……相談文にはそれ以上の情報がないので、とりあえずその前提で話を進めますけど。
しかし、だとしたらホント、いろんな意味で、浅はかだな~!
とにかく、どこかよその国の人と結婚したいなら、とっととそこに住むなりなんなり、その国の人と直接お近づきになる手段を考えれば良かろうにさ。
そこでまず、その国の人っぽく整形、っていう考え方がもう、完全にイカれてるよ!
だいいち、「その国の人っぽく整形」というのが、向こうでのモテ顔だとは全然限らないわけじゃん?
特に、白人的なるものにコンプレックスや憧憬を感じている側と、当のご本人たちでは、どういうのがイケてる顔立ちかっていう認識に、意外とギャップがあったりするもんじゃないかと思いますけど。
わかりやすいところでは、「高い鼻」とかさ。
日本だと、根強い白人コンプレックスや希少性もあって、基本的にはそれだけでプラス評価になる場面が多いだろうけど、当人たち的には、当然のことながらそっちのが標準、なんなら平凡なわけで。
それこそ、日本の芸人さんとかがたまにやる「ワシ鼻」の付け鼻とか、人種的ステレオタイプを嘲笑する、ディスに取られかねないって話、聞いたことがあります。
こばなみ:あ、そうなの!?
宇多丸:特に女性は、アジア人ならアジア人らしい、彫りが浅くて小作りな顔立ちのほうが、世界的には確実にモテますよね。オリエンタルガール幻想、いまだに根強いから。
逆に、アジア人男性のセックスアピール評価はいまだにお世辞にも高いとは言えないのが残念ではありますが……世界の大半ではやっぱ、「たくましさ」っていう絶対基準が強いからな~。
いずれにしても、少なくとも、「顔の造作だけ白人的特徴に寄せたつもり、のアジア人男性」って、本場の皆さんにはむしろあまり好まれない可能性もかなり高いと思うんですけど(笑)。
でも、たぶんだけど、この彼にとって一番優先順位が高いのは、自分自身の肉体を含め、あくまでその「“外国人”そのもの」に近づくこと、のほうなんだろうね。
結婚したいというのも、要は、子どもの見た目をナチュラルにそっち方向に持ってきたい、ってことなんじゃない?
いやまぁ、それもたしかに「美意識」の一種とは言えるのかもしれないけど……おそろしく自己完結的というか、 ナルシスティックな欲望ではあるよな。
こばなみ:どんな整形したのか、見てみたいわっ!
宇多丸:見てみたいし、ちょっと話も聞いてみたい。なんだってそんな突拍子もない考えを持つに至ったのか。
その意味では、ちょっと「面白い」人なのは間違いないんだよな~。
だから、なまずさんがおっしゃってる、「適度な距離を保ちつつ友人関係を築ければ」っていうのが、やはり正解なんだと思いますよ。
少し離れたところから眺めて面白がるくらいで、ちょうどいい。
友達としてだったら、前も言ったけど、ある程度の正しくなさとかダメさも、その人特有の個性として、むしろ好ましく、愛おしく感じられたりするもんじゃん? 「人としては好き」ってくらいならなおさらでさ。
逆に、結婚なんかしたら、振り回されまくるのはほぼ間違いなしな人なんだから(笑)。向こうからそこに一線を引いてくれたのは、逆に良かったくらいなんじゃないかな。
もちろん、彼の言う「外国人」ではない、という件について、なまずさんに責任があろうはずもないわけだから!
あんまり引きずるのもバカらしいでしょ?
なので、客観的に見れば、「美意識」なんてキレイなもんじゃなくて、はっきり「ヤバいこと言ってる人」なんだ、ってことをなまずさんもしっかり認識した上で、できるだけ早く、友人として「面白がる」モードに移行してゆくことをオススメしますね。つまり、基本的には今の方向性で、やっぱり間違ってはいないだろうということ。
一緒にヤツの奇人ぶりを笑える同性の友達でもいたりすれば、さらに客観視点が確保できていいかもしれない。
こばなみ:久々にメガトン級の相談でしたね。これ級の変な人にはめったに巡り会わないと思うので、なまずさん、次いきましょう! よき出会いがありますように★
【今週のお絵描き】
画・宇多丸
ライムスター・宇多丸/日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパーにして、2007年にTBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」(毎週土曜日22:00~24:00)が始まるや、ラジオパーソナリティとしてもブレイク中。ほかTOKYO MX「バラいろダンディ」(毎週水曜日21:00~21:55)、AbemaTV「ライムスター宇多丸の水曜The NIGHT」(毎週水曜日25:00~27:00)などさまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。http://www.rhymester.jp/
※キャリア通算10枚目のアルバム『Bitter, Sweet & Beautiful』発売中!
※ラジオ番組「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」の特集コーナー「サタデーナイト・ラボ」で大反響を巻き起こした、伝説の特集シリーズを完全書籍化。爆笑できてタメになる、音楽の再発見と探求の書『R&B馬鹿リリック大行進 〜本当はウットリできない海外R&B歌詞の世界〜』がスモール出版より絶賛発売中!(税別2,200円)。購入はこちら