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【教えてセンセイ!】産婦人科医・高尾美穂先生に聞く、生理の本当!(3) 現代女子が経験する生理の回数は昔の9倍!?  経血コントロールが目的ではない骨盤底筋トレーニングの効果って?

産婦人科専門医・医学博士であり、ヨガの指導者としても活躍中の高尾美穂先生にズバリ質問するシリーズの第3回。生理について、「昔の人はナプキンもなく暮らしていたからトイレで経血を出していた」とか「“骨盤底筋”をトレーニングすれば現代人もコントロールできるようになる」というような話、どこかで聞いたことがありませんか? 女性ならちょっと気になるそのウワサ。信じていいのかどうなのか!? 高尾先生に詳しく教えてもらいました。

(テキスト:女子部JAPAN(・v・) さかい/イラスト:北野彩)

 

勝手に出てくる経血を意図的に止めるのはムリだとしても…
おなかを押せば出し切れる!?

ともい:【教えてセンセイ!】産婦人科医・高尾美穂先生に聞く、生理の本当!(1) 生理を早く終わらせるには? 布ナプキンやトレーニングで経血コントロールって可能なの!?では、どれだけ腟の周りの筋肉を鍛えても構造的にピタッと閉じることはできないと聞きましたが、子宮の方を収縮させるような方法はないのでしょうか?

 

高尾先生:たとえば私たちの腕や足の筋肉は、意図的に動かすことができますよね。でも胃や膀胱の周りの筋肉、そして子宮は、自分の意思では動かせないんです。これらは自律神経によって勝手に働いてくれている器官。「胃の働きを良く!」とか「体温上げて!」「汗出して!」なんて思っても自分ではコントロールできないのと同じで、子宮は意図的に収縮させられません。

 

さかい:収縮させて経血を止めるのがムリならば、子宮をおなかの上から押して出血を促すことはできませんか?

 

高尾先生:それもありえないですね。子宮の前にはまず膀胱があり、子宮の後ろには直腸があるわけで、子宮そのものをおなかの上から押すことはできないんです。婦人科で腟から指を入れながらおなかを触診することがありますが、それは指で下から子宮を支えるため。そうでもしないと子宮だけに圧をかけるなどということはできません。

 

昔の人が経血をコントロールしていたというのは
いろんな理由が重なってつくられた都市伝説!

たけだ:じゃあ、昔の人は「経血をコントロールできていた」なんて聞くのは、つくり話なのでしょうか。

 

さかい:本当じゃないとしたら、どうしてそんな話が出回っているのかな?

 

高尾先生:たとえば日本の江戸時代の女性がどういう一生を送っていたかを考えてみてください。まず初潮は15歳くらい。今の女性だと12歳くらいですが、当時は栄養状態が今よりも悪いから体の発達も遅く、生理がはじまるのも遅かったんですね。そして17歳くらいで結婚して、だいたいすぐに子供を妊娠、出産します。江戸時代は約3年授乳をしていたという記録があり、授乳期間中は排卵が戻りにくいので、その間は基本的に生理がありません。そしてたまたまやってきた排卵で、一回も生理が来ないうちにすぐにまた次の子を妊娠するというケースも多かったんです。しかも子だくさんで7人くらい産むのが一般的でした。なおかつ、寿命は短くて50歳に満たなかった。

 

たけだ:つまり、そもそも一生の中で生理になる回数が圧倒的に少なかったんですね!

 

高尾先生:江戸時代の女性が人生で生理を経験した回数は約50回だったと言われるのに対し、現代に生きる私たちは約450回なんです(たとえば初潮が12歳、2人出産、それぞれ1年間授乳、閉経が50歳という人の場合)。ちなみに女性の平均寿命が閉経の平均年齢を超えたのが、1947年。江戸時代からすでに150年が経ち、私たちの健康状態やライフスタイルは大きく変化してきたんです。

 

ともい:江戸時代の人はたま〜にくる生理にどう対応していたのかな…?

 

高尾先生:記録によれば、おしりをふくのに使う“ちり紙”を縦長に折って、それを腟の中に入れていたようです。でも下着は腰巻のみだったので、落としたりしないよう内股をぎゅっと締めて暮らしていたのではないかと思われます。それから、生理中は汚らわしいとされ「生理小屋」で休んでいたという記録もありますね。

 

さかい:腟に紙を入れていただけとは、ビックリです。すぐに落としてしまいそう…。

 

高尾先生:着物を着て畳の上で立ったり座ったりするという生活習慣から、自ずとおしりや骨盤周り、そして骨盤底筋が鍛えられていたと考えられます。いま、電車の座席に座っている女の子たちの足がパカッて開いているのを見ると、現代女性はこの部分の筋肉を使えていないんだなと思いますね。

 

江戸時代には自然と鍛えられていた骨盤底筋
鍛えられていない現代人を悩ますのは、ズバリ「尿モレ」!

ともい:だからといって現代人が骨盤底筋を鍛えても、前々回から教えていただいているように、筋肉の構造としては経血コントロールができるようにはならないんですよね…。

 

高尾先生:平均寿命も大幅に伸びた現代では、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)の高い人生を送りたいという人が増え、尿モレを防ぐ目的で骨盤底筋トレーニングが注目を集めはじめました。そして骨盤底筋が鍛えられる筋肉であるという認識から、月経血を出したり止めたりできるようになるという間違った印象が与えられてしまったんですね。
でも、骨盤底筋トレーニングで経血コントロールが可能になることはなくても、「できるといいな」と思って取り組むことは決して悪いことじゃないと思います。

 

たけだ:それだけ自分の体に向き合っているってことですよね。

 

高尾先生:生理そのものに目を向けるということにもなりますしね。それに、骨盤底筋に意識が向くということ自体が骨盤周りの筋肉を使うことにつながるので、QOLを高く長生きするという意味では有益だと思います。

 

私たちが、ふだんの生活でできることって?
骨盤底筋を意識すると姿勢やO脚にも効果あり!?

さかい:畳の上での着物生活がもはや非日常となった私たちですが、ふだんの生活で骨盤底筋のトレーニングができる方法はありますか?

 

高尾先生:たとえばデスクワークが多い人なら、丸いプラスチックのゴミ箱のようなものを太ももの間にはさんで椅子に座り、お仕事をしてみるといいですよ。これはO脚にも効果があるんです。

 

さかい:デスクワークだし、O脚だし、実は産後には尿モレもちょっと気になっていた私にうってつけです! 取り入れてみようかな(と、ここで高尾先生から直々にレクチャーを受け、取材中に実践!)。

 

高尾先生:筋肉って、一か所の筋肉だけを使っているということはほとんどなくて、骨盤底筋のトレーニングをすることで他の筋肉も鍛えられるんです。骨盤底筋は腹横筋という一番大切な腹筋群ともつながっているから、腹筋を使っているのも感じるはず。しかも腹筋を使っているということは、必ず背筋も使っているんです。だから背中が起きて、自然と姿勢もよくなりますよ。

ともい:たしかに座り姿がさっきよりもいい感じ!

 

 

さかい:むしろこの状態で姿勢を悪くする方がつらいです…!

 

 

若い女性や出産経験のない女性にも
骨盤底筋トレーニングはおすすめ

ともい:若い人や出産経験のない女性でも、骨盤底筋トレーニングはやった方がいいんですか?

 

高尾先生:最近は子どもを産んだことのない20代の人でも尿モレを訴えてきています。やっぱり、生活習慣が影響しているのだと思います。そして一番気にしてほしいのは、出産経験のある人。特に産後1年くらいまでにたまにでも尿モレがあった人は、ちょっと注意しておいてほしいですね。産後の女性にとって軽い尿モレ程度はよくあることで心配いらないという認識の方が多い様だけれど、高齢になったときのことを考えたら実はハイリスク。産後から高齢者になるまでは30〜40年間もあるわけだから、その長い期間に少しでも意識を持ち続けていれば、将来にいい影響を及ぼすはずです。

 

たけだ:先のことを見すえて、意識を持っておくことが大切ですね。

 

(ちなみに、取材終了までゴミ箱挟みトレーニングを取材終了時まで続けていたさかいは、終始姿勢がキリリ。下半身がだんだんとプルプルしだし、筋肉を使ったことを実感しました。後日もちょくちょく継続中!)

 

正しい情報を味方にして、
元気に未来をむかえよう!

毎月訪れるのにも関わらず、きちんと理解せずマイナスなことばかり考えてしまいがちな生理。全3回にわたり高尾先生にお話を伺って感じたのは、正しい情報を身につけると向き合い方がプラスに変わり、気持ちも少し軽くなるということでした。自分の力で経血を止めたり出したりすることは難しいからこそ、自分自身の生理としっかり向き合い、より快適にする方法を探っていきたいもの。長く元気でキレイでいられるよう、骨盤底筋トレーニングなども取り入れながら、自分にとって正しくよりよい選択を重ねていけるといいですね。

 

<教えてくれたセンセイ>

産婦人科専門医・医学博士・婦人科スポーツドクター/イーク表参道 副院長
高尾美穂 先生
東京慈恵会医科大学大学院修了後、慈恵医大病院 産婦人科助教、東京労災病院 女性総合外来などを経て現在イーク表参道 副院長を務める。大学病院で学び実践してきた西洋医学をベースに、ヨガ、アンチエイジング医学、漢方をはじめとした東洋医学、栄養学、スポーツ医学を総合的多角的に用い、女性がよりよく歳を重ねていけるよう様々な角度からサポートすることをライフワークとしている。
オフィシャルサイト http://www.mihotakao.jp/

 

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